さいとうれんたろう
おかしライター

1981年、ニューヨーク大学へ英語留学。その後、メイン芸術大学(絵画、彫刻、陶芸) を経て、ニューヨークパーソンズデザイン大学ファッションデザイン学科卒業。クチュー ル系デザイナーに師事後、デザイナーとして活動。2001年2月、日本に帰国。デザイナー 、コーディネーター、翻訳、通訳などしながら、気ままに執筆/創作活動中。

09.21.2011

巨乳でビッチが"おしゃれ"なの~



1960年頃から"ソフトコアポルノ映画"を撮り続けていたラス・メイヤー監督の作品は、アメリカではアンダーグラウンドなカルト映画として、キッチュ大好きのゲイや女性上位の世界観に共感するレズビアンにも人気があります。日本では数年前に、ほぼ全作(18作)を劇場公開する映画祭が開催され、DVDボックスも発売されました。エッチな親父が自己資金(!)で製作から、脚本、撮影、監督、編集までやっていた"ソフトコア映画"も、今では"おしゃれ映画"となり女性客を集める・・・かつては女性人権運動家から敵視されたジャンルの映画も、時代が変われば、受け取られ方も変わるものだということなのです。


ラス・メイヤーと言えば・・・出演している女優は全員「巨乳」ということ。その上、出てくる女性は皆、積極的な淫乱女ばかりという男のスケベ願望ストレートな存在。出てくる男性も男性で、筋肉隆々のマッチョとか、男臭くて毛深い田舎者とか、絶倫な肉食系ばかり・・・ラス・メイヤー映画の世界では、誰もが性本能剥き出しで行動するのが"アタリマエ"なのであります。おしゃれ感ならば、巨乳ビッチの女王"トゥラ・サターナ"(実は日系人!)主演の「ファスター・プッシィキャット!キル!キル!」という東映ピンキー映画のルーツのようなエロティック&バイオレンスな映画がベストですが・・・ラス・メイヤーらしい作品となると「ヴィクセン」ではないでしょうか?


カナダの大自然を舞台に、釣りの客のガイドと結婚した若妻ヴィクセンの、自由奔放なセックスライフを描いた作品なのですが・・・森林レンジャーから、釣り客の夫婦(旦那も奥さんもどちらとも!)、そして自分の弟までとエッチしてしまうのだからトンでもありません。生魚をしゃぶったり、胸の谷間に入れたりしながら、踊って誘惑する「フィッシュダンス」は"エロティック"を超えて"シュール"であります。


しかし、エロだけでなく、人種差別、ベトナム戦争の徴兵制度、共産主義といった政治的な要素をぶち込んで、風刺に満ちているのがラス・メイヤーの面白さ。ヴィクセンの弟の親友はアメリカの徴兵制度から逃げてきたアメリカ黒人という設定なのですが、ヴィクセンの彼に対する人種差別っぷりは圧倒的。「サンボ」と呼び捨て「体臭が臭い」などと言いたい放題・・・本作製作当時(1968年)には存在していたであろう人種差別をあからさまにする白人を嘲笑しながらも、差別されている黒人側の問題も皮肉まじりにヴィクセンに指摘させているところはさすが!


差別的な表現を規制する現在では絶対に耳にすることのない台詞の数々こそ、巨乳以上にインパクトを感じさせるのす。


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06.14.2011

悪ふざけもいい加減にしないさい!



まだ、ポルノ映画を映画館で上映していた時代(1980年代)のこと・・・「薔薇族映画」と呼ばれたゲイ向けのソフトポルノ映画が製作されたことがありました。その第1作目が、この「巨根伝説 美しき謎」であります。


ボクはこの映画のことは全く知らなかたのですが、アメリカのアマゾンを物色している時に偶然見つけてしまったのです。ジャケットの写真から、三島由紀夫の「憂国」のシーンを連想させました。しかし三島由紀夫夫人は氏の同性愛を匂わせる描写に対して頑に許可をしないので有名・・・ポール・シュナイダー監督の名作「MISHIMA」は日本では封印されたままだし、三島自身が出演/監督した切腹映画「憂国」さえ全集の一部として陽の目を見るまで長い年月がかかりました。それなのに、三島由紀夫の決起事件をネタにしたゲイポルノが日本で作られていたなんて驚愕です!


多くのピンク映画を監督したの中村幻児作品ということもあって、意外にも映画としてはしっかりとは作られています。公開当時(1983年)には話題になったようで、全国の成人館で上演され大ヒット、1995年にはロッテルダム国際映画祭に正式招聘されたりもしています。


ジムでトレーニングする若者たち・・・カメラは股間にズームインというオープニングで始まります。実はこのジムは、三谷麻紀夫(!)を隊長とする右翼グループのトレーニング場だったのです。何を目的としているのかよく分からない愛国集団で、野原で軍隊訓練とかやったりしています。しかし合宿所の夜は隊員同士のカップルで乱交・・・隊長が切腹ショーを演じて、それ見ながら隊員たちが興奮して、また乱交。「右翼=一心同体」ということで男同士でやりまくりです。三島由紀夫と盾の会をネタに「悪ふざけもいい加減にしなさい!」って感じです。


いよいよ警視総監を人質にしてクーデターを起こすことになるのですが、撮影にお金のかかるクーデター場面はなく・・・決起の前夜にセックスやり過ぎで寝過ごしてしまった隊員のカップルが、その後ゲイボーイとして女装して二丁目で働いているという結末・・・「巨根伝説」は?「美しき謎」は?という疑問には答えない"ピンク映画"らしいオチでした。


この映画が語り草になっている理由は、薔薇族映画第1作で興行的にも成功したというだけでなく、隊長の三谷谷麻紀夫役を、当時ピンク映画(ストレートもの)の常連男優だった大杉蓮(当時32歳)が演じているということ。スレンダーで口ひげを生やしたルックスは1980年代によくいた二丁目のホモそのもの・・・濡れ場ではベタベタの受け役を演じておられるのです。その後の怪演派の男優っぷりの片鱗をゲイポルノでも手抜きなしで見せつける大杉蓮・・・スゴイです!


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01.18.2011

崇高なる不感症、杉本美樹!



日活ロマンポルノと時を同じくして、エログロで場末な映画を制作していた会社が、ポルノ路線を打ち出した"東映"でありました。


池玲子と共に「東映ポルノ女優」の看板を担っていたのが、杉本美樹。当時のポルノ女優さんの中では、垢抜けたルックスに長身でスレンダーな肢体・・・ある意味、時代を先取りしたような80'Sの雰囲気の女優さんでした。無表情で棒読みの台詞は、東映映画史にも残る"大根女優"としての貫禄さえ感じさせるほど・・・とにかく全編に渡ってずっと不機嫌な仏頂面で、面倒くさそうな投げやりな演技なのですから。ただ逆にそれが、いい感じに"やさぐれ"ている感を漂わせることになり、まさに70年代のシラケ世代を体現しているかのようです。そんな彼女の代表作が1974年に制作された「0(ゼロ)課の女 赤い手錠(ワッパ)」であります。


悪党グループに誘拐された次期総理候補の娘を救うべく雇われるのが、杉本美樹扮する女刑事。悪党グループに入り込んで犯人達を抹殺していくという、ハイテンポで迫力満点のポルノアクション大作です!女刑事はチェーンのような赤い手錠を投げつけて、相手の動きを封じるというのがタイトルの由縁。「0課」というのは、任務のためには法律さえ無視して殺人さえ犯してしまう特殊捜査課のこと・・・あまりにもマンガチックな設定は、原作が「女囚さそり」と同じ漫画家さんだからかもしれません。ただ、こちらは「さそり」よりも、脱ぎまくり、犯されまくり、殺しまくるというところが、まさに当時の東映ポルノ路線的であります。


とにかく出てくる登場人物はぜ~んぶ嫌な奴ら・・・悪党は仲間割れして裏切り殺し合うし、警察も証拠隠滅のためにドンドン人殺しをするし、シャブ漬けにされた娘を見捨てて殺害を次期総理候補は命じるし・・・。これほど倫理感覚ゼロな世界では、杉本美樹はとにかく犯されるために存在しているようなもの・・・濡れ場は、すべて暴力的なレイプ!でも、何をされようと、やられるがまま。しかし、あまりの無表情っぷりと棒読み台詞により、いつしかハードボイルド調のクールさを生み出すという偶発的な化学反応を起こしてしまうのであります!崇高なまでに不感症の杉本美樹は、血だらけの腐りきった汚い世界とは、まるで別次元の存在のように、潔く「いる」のです。


映画界デビューからわずか7年ほどで、同級生(!)との結婚を機に芸能界から引退・・・杉本美樹は「昭和の不感症女優」としての引き際の美学さえも、また見事なのであります!


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12.18.2010

"桂たまき"の見事なブスっぷりと存在感!



「日活ロマンポルノ」とは、経営難に陥った日活が1971年から制作を始めた低予算でも、ある程度利益の上がる成人映画。1980年代後半、アダルトビデオ(AV)の普及により終止符を打つことになるわけですが、その後、大御所として活躍する監督(崔洋一、相米慎二、滝田洋二郎、根岸吉太郎、森田芳光など)を多く排出しました。


1970年代前半「野良猫ロック」シリーズ(梶芽衣子)で知られた長谷川安春監督は、「暴力」に特化した作品群でロマンポルノ中でも異彩を放っています。本来は"エロ"を売りに制作されるロマンポルノなのでありますが・・・「暴行切り裂きジャック」に至っては、セックスシーンは殆どなく、殺しのシーンばかりというトンデモナイ作品となっています。


「暴行切り裂きジャック」は、パティシエとして働く気弱な男と、同じ店に勤める気の強いウエイトレスの女(桂たまき)が、殺しを繰り返していくという物語。ある夜、偶然の殺しによって、ふたりは異様な性的興奮を味わってしまうのであります。始めは、女が男を煽っているのですが・・・次第に男は殺しによって「男としての自我」を確立していきます。ダバダバダ~的な洒落た軽快な音楽にのせ、まるで食事でもするかのように、女たちを物のように殺していきます。もはや目的はセックスではなく、女を殺すこと・・・ロマンポルノのお約束であるセックスシーンは、男根のかわりにナイフを女の股間に突き刺す殺しのシーンにすり替わっていきます。猟奇的な殺人フェチ(!)でない限り、まったくもって"ヌケない"映画となってしまっているのです。


もうひとつの"ヌケない"要因は、ヒロインを演じる桂たまきの見事なブスっぷり!若い女役なのに、すでに"オバちゃん"の鬱陶しい貫禄。なんたって数少ないまともなセックスシーンを演じるのは彼女なのだから、もう勘弁してくれ・・・であります。下膨れの二重あご、意地悪そうな仏頂面に、だらしない巨乳(世の中には、逆にこういうタイプがお好みという方もいるかもしれませんが)「なんで、こんな女優がヒロインなんだ!」と苛立ちを感じるに違いありません。ただ、ヒロインの魅力がここまで欠如しているからこそ「このブス死ね!」と思わず罵りたくなり・・・その期待通り、ヒロインをあっさりと刺し殺す主人公に観客は、"爽快感"さえ感じるという恐ろしいこととなるのです。


「暴行切り裂きジャック」は、その後出現するオタク男子の危うい「男の性」を予見していたような作品として、製作から30年以上経た今でも、その衝撃と不気味さは変わらないのあります。


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