さいとうれんたろうおかしライター
1981年、ニューヨーク大学へ英語留学。その後、メイン芸術大学(絵画、彫刻、陶芸) を経て、ニューヨークパーソンズデザイン大学ファッションデザイン学科卒業。クチュー ル系デザイナーに師事後、デザイナーとして活動。2001年2月、日本に帰国。デザイナー 、コーディネーター、翻訳、通訳などしながら、気ままに執筆/創作活動中。
07.22.2011
品性なくても尊厳はあるのよ!
ファム・ファタールな女優/テレサ・ラッセルの、一番のハマり役だとボクが思っているのは、変態監督ケン・ラッセルによる「ボンテージ」の"リズ"という娼婦役であります。原題はずばり「WHORE」・・・娼婦という意味ですが「Bitch/牝犬」と並んで、女性に対する罵声として使われることの多い言葉です。ニューヨークで、この映画が公開された際に、映画館や工事中の壁などに「WHORE」というタイトルが目立つポスターが宣伝に貼られていた光景は奇妙でありました。
「ボンテージ」はリズ(テレサ・ラッセル)という街娼の二日間の出来事を回想を交えながら、モノローグでカメラに向かって(!)語るという映画。舞台となっているのは、おそらくアメリカ南部の街のダウンタウン。リズはヒモ男から逃げている最中で、人目につかないトンネル近くで客引きなんかしています。声をかけてくる男たちは、本当に最低な男ばかり・・・言いなりにならないと暴力を振るうなんて当たり前、無理矢理しゃぶらされたり、車内で輪姦されたり。トラブルから守ってくれるはずのヒモ男だって、裏切った売春婦を容赦なく腹を裂いてゴミのよう捨ててしまうのですから。男たちは仕事や家庭で得られなかった癒しを娼婦に求めながら、侮辱したり罵倒したりして、ストレス発散しているかのようです。娼婦は抑圧された人間からいじめを受ける最も弱い立場の人間として描かれ、公開当時アメリカでは「女性の人権を卑下している」とメディアに叩かれたのでした。
猥褻なスラングに満ちあふれたリズの台詞から、あまりの品性のなさには唖然とさせられます。ひと目惚れしたアル中の男(顔だけは良い!)と安易に結婚して子供が生まれる前に家庭崩壊。手早く稼ぐ手段として売春に手を出しているのも、彼女の自業自得なところもあるのです。ぺったんこの尻に、たるんだ腹のゆるい身体も無惨。しかし、彼女は母親として愛情がないわけでもないし、ある意味自立して働く女性でもあり・・・彼女なりの生きる"哲学"を持っていたりします。トイレの個室に他の娼婦が客を連れ込んで「お口のサービス」が終わったとき、リズは唯一の女友達から教わった"ある言葉"をリズは吐き捨ているように言うのです!
「DIGINITY!」
「尊厳」なんて・・・リズには似つかわしくない言葉だけど、決して他者をいじめることはしないリズ。映画の最後で彼女は復讐を果たして最悪の状況からは逃れることができます。そして、ひとりで前向きでたくましく歩いていく・・・そんな彼女の「健気さ」に、ボクは「尊厳」を感じてしまうのです。

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