さいとうれんたろう
おかしライター

1981年、ニューヨーク大学へ英語留学。その後、メイン芸術大学(絵画、彫刻、陶芸) を経て、ニューヨークパーソンズデザイン大学ファッションデザイン学科卒業。クチュー ル系デザイナーに師事後、デザイナーとして活動。2001年2月、日本に帰国。デザイナー 、コーディネーター、翻訳、通訳などしながら、気ままに執筆/創作活動中。

06.29.2011

大人の階段を上ったの!



「愛の狩人」という映画をボクが初めて観たのは深夜のテレビ映画劇場・・・当時は一家にテレビは一台という時代だったので、夜中にこっそりとイヤフォンで音声を聞きながらテレビにかぶりつくように観たのでした。どうやって、この映画のことをボクが知ったのかは記憶にはないのですが・・・「あいのかりゅうど」というタイトルの響きに妙にエロさを感じて興奮してしまったのです。


原題の「Carnal Knowledge」とは広い意味での"性交"のこと・・・公の場でセックスを語ったり、映画で描かれることがなかった1970年代初頭という時代を考慮すると、挑戦的な作品であったことは想像出来ます。ニヒリストのプレイボーイのジョナサン(ジャック・ニコルソン)と、素朴でロマンチストのサンディ(アート・ガーファンクル)という大学のルームメイトで親友の二人の青年の1940年代から1970年代までの25年間に渡る性の遍歴を皮肉なタッチで描いていきます。


クールな女子学生のスーザン(キャンディス・バーゲン)は、サンディと付き合いながらも肉体関係を拒否し続けます。しかし、ジョナサンにはあっさりと身体を許してしまう不可解なスーザン・・・でも、結果的にはジョナサンを捨て、誠実なサンディとの結婚を選ぶのは、昔も今も世界どこでも変わらない女の"したたたかさ"のようです。ジョナサンは快楽だけを求めて、いくつもの情事を重ねながらも、女優のボビー(アン・マーガレット)と暮らし始めます。しかし、ジョナサンはボビーの気持ちを無視して、見捨てるのです。独り身にななり、過去の女性遍歴をスライドショーにして愉しむジョナサンは・・・すでに「性的不能者」になってしまっています。それでもなお「性」に執着して、娼婦(リタ・モレノ)との言葉プレイで恍惚となるラストシーンが、なんとも"痛々しい"のでした。


初めてこの映画を見た時には何を描こうとしているのか、性的には目覚めきっていなかったボクには理解できませんでした。しかし快楽だけを求め続けると、いつか「不能」という罰が当たってしまう・・・ジョナサンの惨めな姿が、トラウマのように脳裏には焼き付いてしまいました。しかし、自分自身がジョナサンの年齢になってみると「性」への執着も、理解できるところがあったりします。男も40代後半にもなると「やれるうちに、やっておかないと!」という気持ちにもなってくるものなのです。「好きな相手と、キチンと付き合ってからじゃないと、エッチはしたくない」なんて"いいわけ"も、いつの間にかしなくなっていました。


「愛の狩人」を観るたびに、ボクは"大人の階段"を上るような気持ちになるのです。


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06.14.2011

悪ふざけもいい加減にしないさい!



まだ、ポルノ映画を映画館で上映していた時代(1980年代)のこと・・・「薔薇族映画」と呼ばれたゲイ向けのソフトポルノ映画が製作されたことがありました。その第1作目が、この「巨根伝説 美しき謎」であります。


ボクはこの映画のことは全く知らなかたのですが、アメリカのアマゾンを物色している時に偶然見つけてしまったのです。ジャケットの写真から、三島由紀夫の「憂国」のシーンを連想させました。しかし三島由紀夫夫人は氏の同性愛を匂わせる描写に対して頑に許可をしないので有名・・・ポール・シュナイダー監督の名作「MISHIMA」は日本では封印されたままだし、三島自身が出演/監督した切腹映画「憂国」さえ全集の一部として陽の目を見るまで長い年月がかかりました。それなのに、三島由紀夫の決起事件をネタにしたゲイポルノが日本で作られていたなんて驚愕です!


多くのピンク映画を監督したの中村幻児作品ということもあって、意外にも映画としてはしっかりとは作られています。公開当時(1983年)には話題になったようで、全国の成人館で上演され大ヒット、1995年にはロッテルダム国際映画祭に正式招聘されたりもしています。


ジムでトレーニングする若者たち・・・カメラは股間にズームインというオープニングで始まります。実はこのジムは、三谷麻紀夫(!)を隊長とする右翼グループのトレーニング場だったのです。何を目的としているのかよく分からない愛国集団で、野原で軍隊訓練とかやったりしています。しかし合宿所の夜は隊員同士のカップルで乱交・・・隊長が切腹ショーを演じて、それ見ながら隊員たちが興奮して、また乱交。「右翼=一心同体」ということで男同士でやりまくりです。三島由紀夫と盾の会をネタに「悪ふざけもいい加減にしなさい!」って感じです。


いよいよ警視総監を人質にしてクーデターを起こすことになるのですが、撮影にお金のかかるクーデター場面はなく・・・決起の前夜にセックスやり過ぎで寝過ごしてしまった隊員のカップルが、その後ゲイボーイとして女装して二丁目で働いているという結末・・・「巨根伝説」は?「美しき謎」は?という疑問には答えない"ピンク映画"らしいオチでした。


この映画が語り草になっている理由は、薔薇族映画第1作で興行的にも成功したというだけでなく、隊長の三谷谷麻紀夫役を、当時ピンク映画(ストレートもの)の常連男優だった大杉蓮(当時32歳)が演じているということ。スレンダーで口ひげを生やしたルックスは1980年代によくいた二丁目のホモそのもの・・・濡れ場ではベタベタの受け役を演じておられるのです。その後の怪演派の男優っぷりの片鱗をゲイポルノでも手抜きなしで見せつける大杉蓮・・・スゴイです!


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06.07.2011

"裕木奈江"の嫌われキャラは世界共通



実は"裕木奈江"が日本で活躍していた(バッシングを受けていた)時代をボクはまったく知りません。それでも写真や映像をみただけでも「嫌われキャラ」だということは、すぐに理解出来ました。"ぶりっ子"なのに枕営業だけは達者そうな腹黒女というキャラが見事なほど立っていましたから(あくまで女子視点!)。


結婚後ロサンジェルスに移住し、2000年代半ば頃から「ハリウッド女優」として活動しているそうで・・・"工藤由貴"に続け~ってことなのでしょうか?工藤由貴はとりあえず主演作1本(ヒマラヤ杉に降る雪)で帰国。現在は富士の麓で「元ハリウッド女優で農家のおかみさん」として活躍しています。一方、裕木奈江は離婚後もハリウッドで頑張り続けているようですが、あれほど袋だたきにあった日本には、錦を飾らない限り、そう易々とは戻ってくることは出来ないのでしょう。


アイスランド映画「レイキャビック・ホエール・ウォッチング・マサカー」では、遂に裕木奈江は"ほぼ"主演扱いとなりました~。低予算の「悪魔のいけにえ」リスペクト映画で、捕鯨禁止によって食いっぱぐれたキチガイ一家が人肉を求めてウェールウォッチングの観光客を襲うという悪趣味なスラッシャームービーではありますが・・・。この種の映画でいろんな民族が出てくる場合、アジア系、黒人、ラテン系と有色人種が先に殺され、主要人物は白人ってことが"お決まり"なわけですが・・・本作はちょっと違います。


10人ほどの乗客のうち3人が日本人という設定。裕木奈江は日本人観光客の夫婦に仕えるメイド(?)の役柄なのですが、この夫婦はブラジルの日系3世の俳優によって演じられているので日本語はカタコト。その上、旦那の方は極端な男尊女卑キャラで、日本人として不愉快な人物描写となっています。ただ、他の登場人物も全員、自己チューで人種差別丸出しのウザいキャラばかりなのですが・・・。


裕木奈江の役は冒頭では地味な存在ですが、他の乗客たちを踏み台のようにし、時には自らの手で乗客までを殺して、自分だけ生き残ろうとする"卑怯でしたたかな女"なのであります。せっかくの主演級作品ですが、肝心の演技が下手、英語の発音も酷い・・・約10年間ハリウッドで活動してきたというわりには衝撃的な大根っぷりです。


本作はスラッシャームービーとしては物足りなく、映画としてもイマイチではありますが・・・数少ない彼女の出演作品を観ただけで、裕木奈江をこの役にピンポイントでキャスティングした監督の目だけは正しいかもしれません。嫌われ者の"腹黒キャラ"というのは言葉や人種の壁を越えて世界共通のようであります。


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