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金崎 敬江
miel

- miel[ミエル] -
東京オレンジ、bird's-eye view、picoLoop%と様々な作品創りに関わり、また、客演、振付、その他パフォーマンスを行ってきた金崎敬江が企画し、振付、構成(時には演出)をする。2010年度発足。
"le miel"はフランス語のハチミツ。甘くて、とろっとしていて、でも天然ものだから赤ちゃんは食べられない。そんな甘い幸せと共に、ちょっと危険を孕んだような作品を。
また「見える」「視える」何かが出せるように。
連絡先(お問い合わせ先):
miel.miel.2010☆gmail.com(☆を@に変えて)



miel(ミエル)#003
『 す き  と お り 』

2014.7.30.wed.-8.5.tue.
@スタジオ空洞(link)


miel(ミエル)#002
『 ま ○ る 』

2012.05.09.-14.
@ザ☆キッチン NAKANO(link)


miel(ミエル)#001
『こ こ  ち   り』

2010.12.23.-27.
アトリエセンティオ(link)

01.15.2016

『 す き と お り 』写真 その10

場面が変わるとそこは、椅子とテーブルだけの空間。
ミナモザ瀬戸山美咲さんによるテキストのシーン。
sukitori cafe1.jpg



















喫茶店。
向き合って座っている男と女。
男は堅気ではない雰囲気。じろじろと女を見ている。
女の表情はこわばっている。
女、耐えられなくなって立ち上がる。
sukitori cafe2.jpg



















男「無駄ですよ。今すぐ逃げるなら知りませんが、この住所もあなたの住所も電話で報告しましたから。もうすぐ来るんじゃないですか。」
女「.......。」
男「そういうわけなんです。」
女「.......。」
男「私も通常こういうことはしないんですけど、お兄さんたっての希望で。」
女「......。」
男「こちらとしても、調査だけで済ませたかったんですが。」
女「......。」
男「見つけたらその場で話を聞いてほしい。あなたの気持ちを、知りたいと。」
女「......。」
男「......なんで8年も。」
女「......。」
男「しかし、こんなに簡単に見つかると思いませんでしたよ。......魔が差したんですか。」
女「......。」
sukitori cafe3.jpg




















男「これまでもいろんな業者に頼んで来て駄目だったって、うちに来たんです。」
人探しの独自のネットワークのこと、それでも見つからない失踪者もいることなど話す男。
「ひとつき前、普通に元の住所から新住所に住民票を移動してた。しかも律義にそこに住んでた。これまでクレジットカード一枚も作って来なかったのにどうたんですか。こちらとしては大変ありがたかったですけどね。」
女「......。」
男「8年間、何をしていたんですか。男に食わせてもらってたんですか?」
女(違うという表情)
男「仕事してたんですね。」
女「はい。」
男(話してくれたということに安心して)「どんな。」
女「別に、できる仕事をしていただけです。」
sukitori cafe4.jpg



















そして、また黙る女。
男「そもそも、どうして失踪したんですか。」
女「......。死にたくなかったからです。」
男「はい?」
女「死にたくないけど、消えたかったからです。」
男(じっと見ている)
女「なんですか。」
sukitori cafe5.jpg



















男「その答えは、自殺しない理由にはなってますが、失踪する理由にはなっていません。」
女「理由はありません。ただ、消えたかったんです。」
家族を残して失踪し、でも両親が死んだことは訃報欄を見て知っていたという女。
地方新聞ですから、ここからはと男が問うと、女はウェブで見れると答える。
それを細めにチェックしていたのに、なぜ帰らなかったのかと問う男。
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女「......。8年前、金魚を飼っていました。」
男「は?」
女「一人暮らししてアパートで、何か生き物がいたらいいなって思って飼い始めました。」
 「でも、あるとき、金魚のことをすっかり忘れたまま、泊まりがけで男の人と海に行ったんです。いい感じになったばかりで、夢中でした。2泊3日だったけど、すごく暑い時期で、エアコンもかけてこなかったし、水槽はきっと煮える寸前だったでしょう。旅先で気づいたときには、もう死んでいるのは確実で、そうしたら何か家に帰りたくないなって、思ったんです。」
男「はあ......。」
女「で、そのまま帰りませんでした。」
男「ええと......それが理由ですか。」
女「別に、「きっかけ」です。」
男「ええと.......。」
女「死んだ金魚、できることなら見たくないじゃないですか。」
男「......。」
男、水のコップに手をかける。
sukitori cafe6.jpg



















女「いなくなる前から、ひとりでした。」
男「え。」
女「小さい頃から、家族は兄のほうしか向いていません。私のことなんて見向きもしませんでした。」
男「......。」
女「本気で探していなかったと思います。だから、見つからなかったんだと思います。」
男「それは(どうかな)。」
そして、女に見たくないものから逃げていると言う男。
その通りで、取り返しがつかなくなるのを待っていると言う女。兄にも、もう関わらないでほしいと伝えてほしいと。
しかし男は、見つけてほしかったから住民票を移したのではと。
男「疲れたんじゃないですか、ひとりでいることに。」
女「だから、」
男「いなくなる前からひとりだった。でも、その「ひとり」を本物の「ひとり」にする必要はなかったんじゃないですか。」

sukitori cafe7.jpg



















男「先ほど電話した時とき、お兄さん言ってました。死んでなくてよかったって。」
女「......。」
男「「生きててよかった」じゃないんですよ。「死んでなくてよかった」って。あなたも毎日、その気持ちで見ていたんじゃないですか?その......新聞の?サイトを?」
沈黙
女「どうしたら」
男「はい?」
女「どうしたら、いいでしょうか。」
男「自分から見つかったんでしょう。」
女「でも、どうしたらいいかわからない。」
男「困ったら、また消えちゃえばいいんじゃないですか。あなたはかくれんぼのプロだ。失踪の「腕」がある。」
女「ふざけないでください。」
男「みーつけた。あ、まだでしたか?」
女「ふざけないでください!」
間。
男「よかったですね。」
女「え?」
男「かくれんぼが続いてて。」
女「......。」


男「さあ、鬼が来ましたよ。」
sukitori cafe9.jpg




















照明変化。
というシーンでした。
(途中、テキストは度々省略しております。)

ここまでは動きが多いシーンを続けてましたが、このシーンは敢えて動かない二人の
緊張感のあるやりとりにしました。
野口くんの男の厭らしくも優しさのある態度、口調。舞ちゃんの怯えながらも、頑なな身体と態度。
小さな空気のやりとり、視線がみえるシーンでした。
いつか私もこのテキストやってみたいのです、実は。


テキスト:『透き通り、』 瀬戸山美咲(ミナモザ)
写真:三浦麻旅子



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