金崎 敬江
miel

- miel[ミエル] -
東京オレンジ、bird's-eye view、picoLoop%と様々な作品創りに関わり、また、客演、振付、その他パフォーマンスを行ってきた金崎敬江が企画し、振付、構成(時には演出)をする。2010年度発足。
"le miel"はフランス語のハチミツ。甘くて、とろっとしていて、でも天然ものだから赤ちゃんは食べられない。そんな甘い幸せと共に、ちょっと危険を孕んだような作品を。
また「見える」「視える」何かが出せるように。
連絡先(お問い合わせ先):
miel.miel.2010☆gmail.com(☆を@に変えて)



miel(ミエル)#003
『 す き  と お り 』

2014.7.30.wed.-8.5.tue.
@スタジオ空洞(link)


miel(ミエル)#002
『 ま ○ る 』

2012.05.09.-14.
@ザ☆キッチン NAKANO(link)


miel(ミエル)#001
『こ こ  ち   り』

2010.12.23.-27.
アトリエセンティオ(link)

03.31.2015

『 す き と お り 』写真 その5

次のシーンへ。
倒れていた人々が歩き出す。
照明は明るくなる。
人々は、それぞれの道を歩く。
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「ここは、あたしの好きな通りです。ここに、産まれてから5歳までを過ごした家がありました。角を曲がって坂をおりれば、すぐ海に出ます。」
ここに見える人は、それぞれお互いが見えないという設定です。
それぞれの風景の中を歩いていて、その地図が何重にも重なって
一枚になっているというような。
海の近くに住んでいた女の子(与古田千晃)は、お父さんに足を洗ってもらった思い出などを。
「今はもう、なんにもなくなってしまいました。」
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「この通りは、僕の好きな通りです。小学校の6年間、毎日歩いた通りです。電柱から次の電柱までの間、ジャンケンで負けたら友達みんなのランドセルを持たなきゃいけませんでした。」
小学校の通学路の思い出を持つ男の子(齋藤陽介)は、飴玉をくれるお婆さんのこと、隣のクラスの女の子のこと。
「今はもう、なんにもなくなってしまいました。」
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「この通りは、俺の好きな通りです。部活の帰りよく買い食いした駄菓子屋がありました。バスケ部だったんだけど練習が終わるころにはもう腹ペコペコで、カップラーメン買っちゃうんです。」
バスケ部の仲間やマネージャーとの思い出を持つ男(堀池直毅)
「今はもう、なんにもなくなってしまいました。」
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「この通りは、あたしの好きな通りです。大学時代やってたバイト先がすぐそこなんです。キャバクラなんですけどね。」
大学時代のバイトの話をする女(石井舞)は、バイトに行く前の気持ち。
「今はもう、なんにもなくなってしまいました。」
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この全員が並んでいるように見える絵も、たまたま繰り返し通っている中の、ある瞬間に起こったこと。それぞれ見ている景色も想いも違う人が、生きているこの世界。
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佐野くんはテキストを当てていないので、彼自身の思い出のある場所を歩いてもらっていました。
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「ここは、僕の好きな通りです。公園通りです。池のほとりは遊歩道になっています。僕の住んでたアパートに彼女が泊まるようになって、そのままほとんど住むようになって、」
同棲をしていた男(辻貴大)は、よく一緒に散歩していたこと、大雨の日の思い出。
「今はもう、なんにもなくなってしまいました。」
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これも、全員が近くに居た瞬間。
写真は、こういう瞬間を切り取ってくれるから面白いなぁと思います。
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「この通りは、私の好きな通りです。赤ちゃんができて通った産婦人科がこの坂の上にあります。つわりのころもお腹がおっきくなってからも、この坂はとてもキツかったなぁ。」
妊娠していた女(古市海見子)は、坂と夫と夏の思い出。
「今はもう、なんにもなくなってしまいました。」
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「この通りは、私の好きな通りです。右に行くと仕事帰りによく立ち寄った焼き鳥屋があって、左に行くと仕事帰りによく立ち寄ったピンサロがあります。」
仕事帰りのちょっとした秘密のような思い出を持つ男(野口卓磨)
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どちらかにしか行かなかった彼が
ピンサロに行った後に、焼鳥屋に行くということを初めてした日
その焼鳥屋に、さっきピンサロでついてくれた女性が飲みに来た、というエピソード。
「彼女もたぶん私に気付いていたのですが、気づかぬ振りで飲んでました。今はもう、なんにもなくなってしまいました。」
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「この通りは、好きな通りです。今はもう、なんにもなくなってしまいました。」
と佐野功が言って、このシーンは終わり。

糸井くんのテキスト、好きでした。
『 す き  と お り 』から、好きな通りとして物語を短いモノローグで紡ぎ
そのショートショートの中にも、人柄、思い出、人生がぎゅっと詰まっているし
今と昔という時間も描かれておりまして、様々な生きているってこと
世の中の在り様のようなことを感じられるのです。

曲はきらきら星変奏曲でした。

テキスト:『Favorite Street』 糸井幸之介(FUKAIPRODUCE羽衣)
写真撮影:三浦麻旅子



03.19.2015

『 す き と お り 』写真 その4

男女が居なくなると、奥から一人の男(佐野功)が出てくる。
疲れているのか、壁に手をつきながら。
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幕を見つめる男。
幕の後ろには、何かの気配。
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幕が上がると、奇妙な物体がそこにある。

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「一体なにがどうなって、お前はそんな風になっているんだ!今、なにが起きてるんだ!?ああ、この化け物め!やめろ!許せない。・・・俺はずっと耐えてきてやったじゃないか!」

音が鳴り始める。かなりの爆音で。
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奇妙な塊から、一人の女(与古田千晃)が生まれ出で、話し始める。

「「奇声をあげないと眠ってしまいそうだから」という絶望的にだらしない理由で日がな一日中「あー」とか「うー」とか「ぎゃー」とかエキセントリックにシャウトし続ける私のことをその男は苦悶の表情で見つめ続けて、そして、時に私の「ぎゃー」を遥かに凌ぐ上等でかつ残酷な、かつ可愛らしい迫力でもって泣き叫ぶ。」

しかし、女の言葉は男には届かない。男は、女を見えてもいないようで、塊に向かって話しかける。
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「どんどこどんどん、どんどこどん。」
「なんだ?何か話したのか?わけがわからない。  この化物!!いいから黙っていろ!」
「そお・・・妖怪、とか、化物、あ、私のことね。私が彼に抱いてる感情は、・・・「好き」。  
・・・そー、あたし、一等賞なの、彼に関して。彼がまだ踏みつぶせそうなほどミニマムな時代から彼を感じているわ。」
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「今、こうして、鉄格子沿いに彼を見るだに間違いなく、私が彼によって入れられているのは、「檻」・・・と言う事実。」
「動くな!俺の動揺に付け込んで逃げ出そうたってそうは行くものか!」
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「なんなんだ、どうしてお前の身体が、透き通り始めているんだ・・・?」
塊は女を取り込み、透き通り。
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「どんどこどんどんどんどこどん。」
「お前の胴体越しに、檻の向こう側が見えるではないか!」
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女を飲み込んだ塊は、別の女(石井舞)を立ち上がらせる。
「彼は私を見て泣き崩れた。もう、ね、崩れ方があまりに見事で、私はあの日のことを思い出したわ。」
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「夏場に牧場で買ってあげたソフトクリームを地面に落としてしまって、みるみる溶けゆくソフトクリームを前に彼が泣きべそかいたあの夏の日を。」
落ちた瞬間、輪になって座っていた塊はぎゃーともわーともつかない声を上げながら崩れ落ちる。
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男はひどく動揺し、檻の隙間に手を入れて手を触れようとするが、届かない。
「なんて愚かなのだろう?この檻の鍵を失くしてしまった!」
「鍵はわたしが飲みこんじまったのよ。」
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「どんどこどんどんどんどこどん、どんどこどんどん、どんどこどん!」
「お前はそんな姿ではないはずだ。」

「・・・・・・もうほとんど姿が見えないじゃないか!」
「私からあなたは、とってもよく見えるわ。」
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女がまた入れ替わる。
「私は、影ばかりになってしまう。」
「恨んでいるというのか?」
未来永劫あなたのそばに寄り添っても構わないの。」
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「お願いだ、わかってよ。どうして俺がお前をこの檻の中に閉じ込めたのか。」

そこにはもう誰もいない。ただ影だけがそこに残っていることに、男は気づかない。跪き檻の脇で泣く男。


というシーン。
これはおぼんろ末原拓馬くんのテキストから立ち上げました。
テキストには「化け物」と「男」という二人?しか出てきませんが
その化け物について様々な考察と存在の仕方を試して
こういう形になりました。
この形になるまでに、一番苦労したシーンです。
我々の考える男と化け物。
写真だと伝わりませんが、音楽の鳴り響き方、その中で声を出す男と女と塊のは
息遣いも含めて、たくさんのやり取りがあっておもしろかったのです。
佐野くんの叫ぶ姿、なかなかないのではないでしょうか。

テキスト:『「好き」と、檻。』 末原拓馬(おぼんろ)
撮影:三浦麻旅子